【中継貿易とは】琉球王国での歴史やシンガポールが栄えた背景を簡単にわかりやすく解説

貿易のもっとも基本的な形は二国間において輸出と輸入が行われる形でしょう。
しかし貿易には二国間だけで行われるものだけでなく、第三国も含めた三国間で行われるものもあります。それが本テキストで解説する、三国間で行われる貿易形態のひとつである「中継貿易(ちゅうけいぼうえき/なかつぎぼうえき)」です。
「中継貿易」とは、輸出国と輸入国の間に第三国を入れて行う貿易形態を意味します。加工貿易や通過貿易と混同されることも多いようですが、中継貿易は三国間で行われる貿易であり、輸出国→中継国→輸入国と製品が移動するのが特徴です。
本テキストでは、中継貿易の定義と仕組み、加工貿易や通過貿易との違い、中継貿易の存在意義やメリットといった基本情報に加えて、日本の中継貿易のルーツである琉球貿易につおて、さらには中継貿易によって発展してきた香港とシンガポールについてなど、中継貿易にまつわる知識をよりわかりやすく解説していきます。
中継貿易とは第三国を経由する貿易:そのメリットは関税の節約
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1. 中継貿易とは何か? 中継貿易の仕組みとは?
まず最初に「中継貿易とは何か」というテーマで、その仕組みや混同しやすい他の貿易形態について解説していきます。
中継貿易とはなにかをわかりやすく解説
中継貿易とは貿易形態の一つであり、「ちゅうけいぼうえき」または「なかつぎぼうえき」とも読みます。一般的な貿易は二国間で行われ、輸出側と輸入側の間で製品とお金のやり取りが生じますが、中継貿易は三国間で行われる貿易であり、輸出国→中継国→輸入国と製品が移動します。
中継する第三国は一旦輸出国から製品を受け取りますが、それをそのまま輸入国へと輸出します。取引全体で見ると輸出国から中継国へ、中継国から輸入国へ、というように、輸出と輸入が2回繰り返されることになります。
中継貿易の仕組み
前述したとおり、中継貿易においては輸出国→中継国→輸入国と製品が2回輸出入を繰り返します。
中継貿易において中継国は輸出国から見ると買う側、輸入国から見ると売る側という立場になります。そのため、中継国は売買の差益やサービス料などの収入を得ることができるのです。
中継貿易と加工貿易の違い/中継貿易と通過貿易との違い
中継貿易と混同しやすい、加工貿易、通過貿易とのそれぞれの違いについても知っておきましょう。
■加工貿易との違い
加工貿易は輸出国→中継国→輸入国という流れは中継貿易と同じなのですが、製品をそのまま輸出する中継貿易とは異なり、中継国で加工を行ってから輸出します。
加工の価値が高ければ高いほど利益も高くなります。加工貿易は日本が得意としてきた貿易手法であり、代表的な製品としては自動車が挙げられます。
加工貿易は中継貿易の一種とされることがあり、加工も含めた中継貿易を中継加工貿易と呼ぶことがあります。
■通過貿易との違い
通過貿易は、製品の流れは輸出国→通過国→輸入国となっており、一見すると中継貿易と変わりがないように見えます。しかし中継貿易においては、輸出国と輸入国、それぞれの国と中継国の間に売買契約が生じますが、通過貿易の場合は第三国である通過国は売買には関係しないため、通過国は売買の差益を得ることができません。
ちなみに運賃や保管料などのサービス料金が通過国の利益となります。
中継貿易はなんのためにあるのか?
そもそも、中継貿易は何のためにあるのでしょうか。二国間で貿易した方が手っ取り早いのに、第三国を挟む意味とは?と疑問に思った方もいらっしゃるでしょう。
中継貿易の存在意義は大きく分けてふたつあります。ひとつは、本当は二国間で貿易したいものの、政治的な理由で直接交易が難しい場合です。かつて、室町時代に明と直接貿易ができなかった日本が現在の沖縄である琉球をハブとして中継貿易を行っていたことからもわかるように、古くから中継貿易はさまざまな国々をつなぐ役割を果たしていたようです。
もうひとつの存在意義は関税の節約です。中継貿易には、FTAを活用することで関税を減免することができるというメリットがあるのです。
2. 中継貿易のメリットとは?
すでに少し触れましたが、この項では中継貿易が貿易当事者でもある第三国=中継国にもたらすメリットについて解説します。
中継貿易が第三国(貿易当事者)にもたらすメリット
当然ながら、海外に進出する、これから進出しようとする日本企業だったらなおの先に述べたとおり、中継貿易が第三国である中継国にもたらす最大のメリットは「売買の差益やサービス料などの収入を得ることができる」ことでしょう。
外貨を獲得できるため、関税を減免するなどの優遇措置をとり、積極的に中継貿易を国策として推し進めている国も少なくありません。
後述しますが、中継貿易港として世界に名高い「香港」や「シンガポール」はその代表的な国・地域と言えるでしょう。
3. 中継貿易で栄えた琉球王国
先述した、琉球を介した中継貿易が日本における中継貿易のルーツだと言われています。琉球王国が行っていた中継貿易を琉球貿易と言いますが、この琉球貿易についても理解を深めておきましょう。
中継貿易の歴史は琉球貿易にあり
当時の中国王朝である明はアジアで最も栄えている国であり、さまざまな国と貿易を行っていましたが、海禁政策を行っており中国と直接貿易できない国も多くありました。そこで、明との貿易が認められていた琉球が中継貿易国というハブになって、大きな利益を得ていたのです。
琉球王国は中継貿易によって15世紀から16世紀の間に大きく栄えましたが、その後は衰退。しかし、中継貿易という貿易形態は今も世界各地に残ってさまざまな国がこの貿易形態によって利益を得ています。
4. 中継貿易(港)で発展してきた香港とシンガポール
琉球と同様、古来より現代まで中継貿易によって発展してきた国・地域に「香港」と「シンガポール」があります。この項では世界三大中継貿易港とも呼ばれる香港とシンガポールの中継貿易について解説します。
香港の中継貿易
かつてイギリス領であった香港は、イギリスの統治の下で中継貿易によって発展を遂げてきました。香港が中継貿易の拠点として選ばれた理由はさまざまなものがありますが、周囲の海域が比較的穏やかであることから、安全に停泊できることが大きかったようです。
中国に返還された今も、香港は中継貿易における中継港として人気を集めています。
香港が発展した背景としては中継貿易だけでなく、工業化によって加工貿易もできるようになったこと、中国向けの物流が増加していることなども挙げられます。
シンガポールの中継貿易
シンガポールはアジアとヨーロッパをつなぐ航路にあり、こちらも香港と同じく自然災害のリスクが低いことから、安全性の高い港として発展してきました。シンガポールに到着するコンテナのうち、8割以上が中継貿易によるものだと推定されています。
2019年には世界の港湾都市ランキングで1位を獲得しており、積み替え・出荷センター機能や港湾物流機能でも1位を獲得。シンガポールは1988年にはすでにターミナル操作管理システム「CITOS」によって港湾業務をIT化することに成功しており、通関手続きもシステムによってワンストップ化されています。
作業の効率化によって膨大な貨物量を取り扱うことができる、まさに世界最大の貿易港と言えるでしょう。
シンガポールへの日本企業の進出動向
そして、海外ビジネス支援プラットフォーム『Digima~出島~』では1年間の進出相談と海外進出企業ならびに、海外進出支援企業を対象に実施したアンケートをもとに毎年、「海外進出白書」を作成しています。
ちなみに『Digima〜出島〜』へ寄せられた海外ビジネス相談の約4000件を、国別に分けて集計した『2021年度 進出先の国・人気ランキング』では、シンガポールは5位となっています。
上記のグラフはシンガポールに関して寄せられた相談の業種別、相談内容別割合ですが、シンガポールへの進出業種の割合を見ていくと、「IT・通信業」の割合の高さが目立ちます。
また、相談内容を見てみると、全体の相談内容割合と比べ、「海外会社設立・登記代行」「海外税務・会計」といった会社運営に関連する相談の割合が大きくなっています。
もちろん、販路拡大に関する相談も多く寄せられているのですが、中継貿易で栄えているASEANのハブであり、金融面でも発展するシンガポールにおいて、税制面の優遇を享受したり、ヘッドクォーターを設立し、グローバル展開の礎にしていこうという流れは依然として続いています。特にITサービスを運営するような会社にその傾向が強いようです。
2021年度はコロナショックからの立ち直りが株価や仮想通貨市場などを大きく押し上げており、そうした投資面からもシンガポールという国への拠点設立ニーズは増加していました。そのため、結果としてASEANの中でトップの人気国となったのです。
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シンガポールへの日本企業の進出動向
中継貿易を行う上で、関税の減免を受けるために重要なのがFTAです。中継貿易を行う国や地域にとって、より広域的なFTAへの加盟が進むことで、貿易面での効果が一段と高まると言えます。
近年、2018年にはシンガポール・スリランカFTAが、2019年にはASEAN・香港FTAが発効されており、アジアのFTAネットワークがさらに拡大されました。特にスリランカは今後、中継貿易国としての成長が見込まれている国でもあり、これらのFTAは今後のアジア経済の発展に寄与するものであると期待されています。
5. 優良な海外進出サポート企業をご紹介
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中継貿易は直接の取引が難しい二国間の貿易を手助けするだけでなく、関税の減免が見込めるなど、輸出国と輸入国にとっても大きなメリットのある貿易形態です
日本においては15世紀から16世紀に栄えた琉球貿易をルーツとする中継貿易ですが、琉球王国はその後衰退、滅亡しました。しかし、中継貿易という貿易形態は今も残り続けており、香港やシンガポールは現在も中継貿易によって栄えています。
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